味噌汁
「旨いラーメンが食いたい」
俺はインスタント味噌汁にお湯を注ぎながらつぶやいた。
味噌の香りが六畳一間の部屋に広がる。
少し遅れて乾燥わかめが増えてくる。
テーブルにお椀を置いて、箸を持つ。
まずはわかめをひとつまみ。
赤味噌の上にうっすらと潮が乗った味がする。
コリコリとした食感を楽しむ余裕はあまりない。
いかんせん腹が減っているのだ。
しかしここで急くと火傷をする。
舌を火傷した後の虚しさったらないから仕方なくゆっくりと冷ましながら口に運んでいく。
膨らんだわかめが減ってきて、ようやく赤茶色の液体が見えてくる。
少しかき混ぜて溶け残った味噌を広げる。
安物の味噌汁だから固有の具はネギだけだったようだ。
わかめに紛れてその姿を視認することはできなかったが、歯に挟まった線維性のそれがネギであることを主張している。
お椀を持ち上げて液体を口に流し込む。
温かい。ゆっくりと冷ます作戦は成功だ。
わかめにお湯を吸われ過ぎたらしくやや濃い目。
ここであんまりゆっくりしていても溶け残り冷えた味噌の塊を食う羽目になる。
勢いよく飲み干さねばならない。
しかしがっつきすぎると口の横からこぼれたりしかねない。
十分に注意が必要だ。
飲み終わる。
目の前の暗いモニターに映る自分の顔は満足とでも言いたげな表情をしている。
腹が鳴る。足りない。
旨いラーメンが食いたい。